『私の名はナルヴァルック』 廣川まさき 著

久々に力のある本に出会いました。 本の力とはメッセージの力だと思う。 そんな本を書いたのはたまたま、私の友人でした。
今から数年前のこと、カナダでのヨットクルージングで出会った彼女。 まさきちゃんが今年の夏、本を出すというニュースを聞いて楽しみにしていたのです。 彼女は作家なのです。卵ではありません、立派な実力派。
出会った頃の最初の印象、見た目はとってもかわいいのに、行動と歩き方は『おかあさんのおなかの中に忘れ物をしてきた子』(著書「ウーマン・アローン」より)のようでした。(実は私も生まれてまる一晩は、母親に男の子が生まれたと思われていたのです。 なんか通じるものがあるなぁと。)
たった一人でアラスカ、ユーコン川をカヌーで下り、彼女が尊敬してやまないフランク安田(安田恭輔)と同じ空気を吸いに行ったのです。  その時のことを書いた「ウーマン・アローン」が第二回開高健ノンフィクション賞を受賞したのでした。

その後、彼女は魂が呼ばれるように、何度もアラスカを訪れたのことでした。 エスキモーと呼ばれる人たちと生活をともにし、同じものを食べ(ここもすごい!)極地での時間をDNAに刻みこむように彼らとすごしてきたのです。 その滞在記を本になさったのですが、人の通わぬような極地なのに、実は米国の核実験で強い放射能に汚染された土砂が密かに埋められていたとの冒頭部は、この本が単なる紀行文ではないことを示しています。

本の力とはメッセージの力だと思う。 「そうだったのか」と思わせる。 彼女が育ててきた価値観がゆるぎないものであることも手伝っています。 声高に叫び続ける活動家のそれではないけれど、我々が知るべき真実を静かに語ってくれています。
そして、ほろっとさせたり感動したり。 彼女がエスキモーの名をもらう場面、クジラの狩猟グループの組長さんと組の契りを交わすくだり・・・ずっと味わっていたくて何度も本を閉じました。
本の中で旅ができる、出会いがある・・間違いなく星五つです。


ブログランキング・にほんブログ村へにほんブログ村 マリンスポーツブログ ヨットへ ←応援よろしくお願いします。ポチっと押してくださいませ