手作りの服
母IRENEさんの趣味は洋裁である。 孫たちが小さいときは1年で100近い作品を作ることもあった。 服作りが佳境に入ると、晩御飯のおかずは簡単な炒め物ばかりだった。
私が太ってしまったとき、着れなくなった服を自作はもちろん、既成服までサイズをすぐに直してくれるのである。 不格好になるので私が「不要」と訴えると
「だって、着れへんやん。」とさっさとミシンの前にもっていってしまう。
今、服を断捨離している。 手作りの洋服は着れなくなってもなかなか廃棄できなかった。
したがってデザインも至極古い。 私はせっかくダイエットできたのに、直す人は寝たきりで家にいないのである。
「気にいらんかったら着なくていいわよ。」
IRENEさんはそうも言っていた。 質のあまり良くない生地でも、とんでもなくしゃれたデザインの服があったりする。 凝りに凝ったドレープがでる服や、ジレー付きのアンサンブルなどいかにも手がこんでいる。
そうか、彼女は作ることが楽しかったんだ。 型紙ひいたりミシン踏んだりしていれば、おかずなんかどうでもよくなるくらい我を忘れていたではないか。
服たちはもうお役目しっかり果たしたんだと思うと少し気が楽になったのである。
今、自分はその服たちの写真を撮りながら整理している。