秩父丸1936年(その5)


私「S子おばあ様だわ。写真のタイトルに『楽焼会』ってあるけど、何?」
母「素焼きの器に、絵を描いて釉かけて焼くあの楽焼よ。」
私「それを船でやるの? 窯を積んでいるわけ? 船に?」
母「簡単な窯があったのよ。あの頃は何か退屈しのぎの娯楽というとよく『楽焼』があったの。」
私「そうか、昔、軽井沢みたいな避暑地にも何軒もあったもんね。」
母「航海中に何回かあったと思うわ。こうやって民家のご門のようなしつらえをして雰囲気出してね。S子おかあさん、着物なんか着ている。どうしてかしらね?」
私「確かにアメリカ行きの写真では洋服ばかりだけど、私が覚えているおばあちゃまはいつも着物だったもの。それになんだか楽しそうよね。リラックスしているかんじ。」

秩父丸での写真はどれも静かで、時間がとてつもなくゆっくり流れています。