秩父丸1936年(その6):祖父と叔父


私「K次郎おじいさまとYASU叔父さんね。叔父さんいたずら盛りってかんじね。K次郎おじいさまが一緒に写真を撮ろうと、バタバタ動く叔父さんをしっかり押さえ込んでいるように見えるわ。可愛くてしかたないって雰囲気ね。」
母「これは秩父丸の最上デッキね。後ろの方だわ。おじいさんの後方に見えている階段をあがると喫煙室みたいな部屋があったのよ。おじいさまの椅子は船の後ろに向かっておいてあるわね。」
私「どの写真でも人が少ないのね。」
母「2月ですもの、冬まっさかりだから船も空いてたわね」
私「二、二六事件が起きた年よね。」
母「事件の事は、海上の船にもニュースが届いて、船の掲示板に殴り書きのような荒っぽい字で書いてあったの。私は『あ、西洋人に読めないように書いてるな・・』って思ったわ。」
私「事件の現場になった山王ホテル、横浜から出る前にお母さんたち家族で泊まったんでしょう。」
母「そうなのよ。あそこでぼんやりしていたら、出られなくなるところだったの。運が良かったわ。」
私「偶然でもちょっと怖い話だわねえ。」
平和で静かな海の上なのに、凄惨な事件のニュースが飛び込み日本人の乗客は皆やるせない思いを抱いていたことでしょう。