Irene

もう、数年前のことですが、母が携帯電話を手にいれメールを始めるというのでセッティングをしていました。
「メールアドレスを作るから、おぼえていられる何かニックネームとかない?」と聞くと「それじゃ、イレーネにして」というのです。
家族の誰もが「へ?!」でした。十代後半の3年間をアメリカで過ごしたとはいえ、派手さも、外国かぶれもない母ですので、なんかバタくさい「イレーネ」という名前がぜんぜんピンと来なかったのです。
昔使っていたペンネームなんだそうで、そのいわれを尋ねると
「"Das Madchen Irene" っていう映画があったのよ。なんとなくイレーネっていいなって思って・・・」
調べてみると1936年ですから、母たちがアメリカで生活を始めた年にできた映画でした。
アメリカか日本か、どこで見たのか覚えてないの。母の再婚をめぐる思春期の少女の心の動きを描いた話で、少女が最後にお母さんの再婚相手に銃を向けるのよ、手がぶるぶる震えて。その場面が印象的で。」
日本では『早春』の邦題がついているので、"Das Madchen Irene" というタイトルで覚えている母が見たのはきっとアメリカでしょう。
ヨシコという名前の母はガイジンが「ヨシぃーコ」と『い』にアクセントを付けて呼ばれるのが嫌だったのに違いありません。母は素敵な名前を探していたのでしょう。
映画のヒロインの名前をとったものの、英語読みの『アイリーン』ではなく、ドイツ語読みのまま『イレーネ』としたところが乙女チックだな。
早春(1936)(1936) - goo 映画