妄想タイム「旧朝香宮邸」


もう秋も終わりというのに、工事中の我が家の窓はカーテンも閉ざしたまま。 息がつまりそうだ・・おまけに今日はなんだか身体のふしぶしも痛い。 熱がでるのかもしれない。 
でも、午後には約束がひとつ。 我が家の近くにある古い洋館に友人を案内するのだ。 彼は若いころ建築家を夢見たこともあるという。 気まぐれを起こして誘ったのは私だから仕方なく出掛けて行った。 館は旧皇族の邸宅で調度品はアールデコで贅沢にしつらえられている。 入ると建築のディティールについての説明書きを渡された。 私はここが好きだ。 贅沢なのだろうけど、派手さがなく、家具や調度品の主張もくどくない。 そして妙に落ち着く。 いい歳になったら、ここで開かれる展示会で各部屋の片隅に座って見張りをするシルバーさんに本気で応募しようと思ったことさえある。 家具のように佇んでいたいのだ。 
平日の今日は見物する人も殆どいない。 友人には勝手に見学をさせて、自分はひとつの窓の前で動かずにいた。 熱でぼんやりし始めた視野にカーテン越しの光すらまぶしい。 ガラスに額をあてたら気持ち良いだろうか・・庭の木々の色づいた葉ももうわずかしかない。 午後は陽が傾くのが早い。 友人はきっとお茶に誘うんだろうな、でも何を話せばいいのだろう・・この窓から見送る方がかっこいいのに。

(内容は全て妄想です)
庭園美術館