バンクーバー・ヨット遊学「プリンセス・ルイザ」(その2)


プリンセス・ルイザ・インレットは、バンクーバから直線距離で130Km北西にあります。 バンクーバー島の東、ジョージア海峡から切り込んだフィヨルドジャービスインレットの奥に盲腸のように位置するインレットです。 その出入口は狭くて浅い急流、マリブ・ラピッドです。 ここは昼間には1回から2回のスラックタイムすなわち潮どまりの時にしか通れません。 ここは州立公園になっていますが、車が通う道はなく、船か水上飛行機でしかたどり着けない秘境なのです。 その最先端には大きく美しい滝があり、その前に桟橋が一本のみ。 他に施設は何もありません。

上:マリブ・ラピッドの入口
ここへの行き来のパッセージプランはスラックタイムに合わせて作られます。 備忘録なので書いておきます。 事前にチャートで航路を再確認。 まず、目で潮を確認します。 最悪、エンジンが途中で止まった場合を想定して、メインセールは事前に上げておきます。 メインハリヤードはコイルして、コックピットに置きます。 メインシートはクリートロックははずして、ウインチロックにしてクルー一人に持たせておいきます。 アンカーを止めている小さなロープもはずしおきます。 更に一番信頼のおけるクルーをウォッチに立たせて、念のため、VHFでセキュリテをかけてから「inbound」します。 マリブ・ラピッドはS字型に曲がっているため、見通しが悪く、出会いがしらは避けなければなりません。

そうして入っていった秘境の泊地。 ネットも電話もVHFすら届きません。 従って天気予報も聞けないので、ここに来る前に仕入れた長期予報や、後から入ってくる船や公園を管理しにやってきた職員から情報をもらったりします。 冒頭の写真は到着翌日に撮ったよその方の船です。 私たちが到着した日にはほかにだれもおらず、鳥の声と滝の音と風の音しかしませんでした。

ボブさんに言われるとおりの場所に船を着けました。 桟橋の先端は後から別の船が来ても、プライバシーが守れ、出港もたやすいのです。 吹く風を予測して、寝ている間の桟橋とハルの接触を避けてポート着けです。 


さて、恒例のハイキング。山の中腹にある滝を目指して出発です。 その前に桟橋の使用料を備え付けの封筒に入れてポストへ投函。ログノートに記載します。 使用料は寄付の形をとっていますが最低限のマナーでしょう、必ず払います。 ボブさんの書いたログ「他にだれもいない!!」は実感こもってます。  シーズン幕開けなのに珍しいことだそうです。
ボブ千日回峰行者の神々しいオーラにたじろいだ私は、荒行はご遠慮申し上げ、滝壺の下方でひとり、シャンプーをすることにしました。 滝の水は清く冷たく、ふと見上げると野イチゴの花が咲き、まだ固い実をつけています。 頭上では水鳥が飛び交い、耳に入るのは滝の音。キーンとするほど、冷たい水ですが、頭もココロも洗われるようでした。


上:カナディアングースの一家
その夜は我々が寝静まった頃に雨が降り、風が猛烈に吹きすさぶ音で目がさめてしまいました。 ボブさんに従って早めにインレットに入ってヨカッタと胸をなでおろしたものです。  翌日になると船が増えてきました。 私たちは昼食に滝の手前のキャンプエリアでたき火を起こし、おそうめんを茹でてみんなで頂きました。 


(つづく) 

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