バンクーバー・ヨット遊学「プリンセス・ルイザへ」(その1)


出かける前日までぐずついていたお天気がうそのように回復しました。 風も弱めですが、北西から安定して吹いています。 しかし、トレーニングですからラクはできません。 今回の6か月のトレーニングは私たちにクルーではなく、スキッパーの技量を身につけることに目標が置かれているのです。 航海中もISPAのベーシックコースおよびコスタルコースで一度勉強したことの確認を次から次へと試されました。 最近クルージングでは必ず使っていたiPadのチャートアプリのナビオニクスはもちろん封印です。 スリーポイントフィックス、トランジットフィックス、ランニングフィックスで、チャート上に現在、船のいる場所を記し、かつ一定時間後に予測される位置(DR)も記します。 それを五分間でできるようにならなくてはいけません。そのためには実際に眼に見える地形をチャート上の地形と照らし合わせ目標物を設定します。。 これが出来なければ一歩も前に進めません。 このあたりの地形はいりくんでいて、遠近感もつけづらく、慣れないととても難しい。

天気予報と潮汐表や地形から船速を予測し、チャート上にフィックスとって、到着時刻を予測し、必要な場所のタイドを計算。 特に水面下の障害物を避けるクリアリングベアリングは正確に行わなければ大きな事故につながります。 日本で週末にヨットに乗っていてもハンドベアリングでフィックスとることなんてありませんし、知らない場所へクルーズすることもめったにありません。 そして何より長年のクルーぐせが染み込んでいるので、ひとつ課題が終われば、ぼーっと景色をみるばかり。 そんな私はトレーナーのボブさんに徹底的にダメ出しされています。 常に頭の中にチャートと実際の地形を見比べていること、エンジンの音、排水の音、風、潮、水面、船速、エンジンの回転数、デプス、時間、時刻・・・すべてにアンテナが張っていること。 スキッパーであれば、クルーの居場所、何をしているか、船全体に気をくばらなければなりません。 そうです、並大抵のことではありません。 正直、ゲッソリしそうです。 

技術的に出来なかったことが練習によってできるようになるのはいいとして、スキッパーに相応しい知識、感覚、態度、気づきを身に着けるのは容易なことではありません。 ましてや末っ子の甘い気質、目の前のモノが気になると足元の花壇を踏んで入っていくB型気質で、「もともとそんなタマじゃないしなあ・・」とうなだれてしまいました。  気持ちが後ずさりしそうな私たちに、ボブさんは「海に行ったら切り替える。 それはできるようになる。 自分もそうだったのだから」と話してくださいました。



2日目の泊地のエグモント。クルージング恒例のハイキングに早速出かけます。船の上でだけでは食べて飲んで寝て・・ばかりなので運動不足になってしまうのです。 ハイキングとなると千日回峰の行者のようになってしまうボブさんの後を必死で追いかけました。 到着した先は超ド級の急流、シーシェルト・ラピッド。狭いインレットはちょうど潮が満潮にさしかかる手前。 海なのに潮が18〜20ノットに達するといいます。 命知らずのカヤッカーが海底の凸を利用して流れに乗り華麗にオールをさばいていました。(実はここの岸辺でウニがたくさん獲れました。もちろん夕食で頂きました。)

次の泊地をガイドブックで調べるタケちゃん。 入り方は? ドックか、ムアリングか、アンカリングか?? 本当は出かける前の作業です。 アンカリングであれば、タイドの変化で必要な最低デプスを計算します。 

陽が沈むのが遅くなり、9時ごろまで外は明るい。 澄んだ空気に満月が美しい。 明日はいよいよマリブ・ラピッドを通って、プリンセスルイザです。(つづく)

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